2018年12月26日

№379◆名無しさん、ブロガーになる

 秋も終わりを迎え、冬が始まった。この時期になると、より一層肌寒さを感じるのは私に筋肉がないからではなく、太陽が日の本から顔を背けてしまったからだろう。外の景色が色あせて見えるのは、私の目が悪いからではなく、北風が彩りを吹き飛ばしてしまったからだろう。しかし、なぜこんなにも私の心は寒さを感じ、私の毎日は色あせて見えるのだろうか。
 四季で一番寒い季節にもかかわらず、世間はクリスマスやら年末やらで過熱していく中、私はというと、どうすればこの虚無な生活から抜け出せるのだろうかと、一度でも足を入れようものなら自力で脱出することは不可能に近い生命エネルギー吸引器に囚われながら、一人、みかんを片手に、思索にふけっている毎日である。


 そんなある日、私のもとに一通のメールが届いた。私にメル友は一人もいないはずだが、いったい誰からのメールだろうか。もしかして、私に春を運んできてくれるようなメールだろうか。お祭りの屋台のくじを引くような気持ちで見てみると、それはやはりというか当然というか、私の期待の斜め下を行くようなものだった。要約すると、「高校生に向けて」というテーマで学生Blogを書いてみませんか、という大学からのお誘いのメールだ。
 私はこれに気だるさを覚えざるを得なかった。高校生に向けてブログなんかを書いたところで、私の心は一℃も暖かくはならないし、無駄に期待を持たされた挙句、裏切られたからだ。私がもう少し若かったら「べらんめぇ!」と言って、即、丁寧にお断りしていたところだろう。
 しかし、私も年を取って知恵をつけた。そう、これはもしかしたらチャンスなのではないだろうか。この色あせた毎日に彩りをもたせてくれる切っ掛けになるのではないだろうかと考えたのだ。そして、悪知恵もつけた。この心の寒さを紛らわすために、ブログで好き勝手なことを書いて憂さ晴らしをしてやろうと。そんな期待を胸に抱きつつ、思惑は懐に忍ばせつつ、私は丁寧に了承のメールを返した。


 こうして、私のブロガー人生が始まった。Blogという大学公認のブログに私というデスペラードが産声を上げたのである。


 さて、人生の最初にやるべきことと言ったら、名前を考えることである。最初は素直に実名で書こうと思った。しかし、ネットの其処此処で炎上している昨今、これからの私のブロガー人生に何が起こるかはわからない。そこで、「名無しさん」というペンネームを用いて書くことにした。これにより、たとえ私が炎上ラインぎりぎりアウトの内容を書いたとしても、私個人が非難されることは避けることができるという寸法だ。全国に1億人はいるとされる、「名無しさん」が誰かを特定することは不可能に近いだろう。「名無しさん」というペンネームからわかることはせいぜい、これを書いている人は、黒髪でメガネをかけていてインドア派であるということぐらいである。

また、ネトオタ感あふれるペンネームを付けることで、このブログを見るイケてない高校生の心理をくすぐり、共感を得てもらいやすくなるだろうという希望的観測に希望を持ってこのペンネームにした。


以降、このブログでは、名無しさんは人称に「名無しさん」を使うので、あらかじめご理解ご了承いただきたい。


ペンネームも決まったところで、記念すべき初投稿に何を書いたものかと、名無しさんは悩んだ。高校生に向けて書いてほしいと言われたが、名無しさんは充実した生活を送っている、俗にいう「リア充」では非ずなので、「こんなことをすればいいよ」的なアドバイス的なことを言ったとしても、何の説得力も持たないだろう。

では、何を書いたらいいのだろうか。「10文字以内で伝えてくれ」と言われたら、「ブルーハーツを聴け」で終わるのだが、どうしたものか。いっそこれから、10回にかけて「名無しさんが独断と偏見で選ぶブルーハーツの名曲 ザ・ベストテン」と題して、ブルーハーツの魅力について語ってしまおうか。しかし、それでは学校の怒りに触れて、このブログからいつの間にか、人知れず消されてしまうだろう。


そんな悩みを3時間ほど抱えた結果、名無しさんは自分が迷走しているということに気が付いた。「高校生に向けて」という文言に必要以上に囚われて、本当に大事なことを見失っていたのである。本当に大事なこと、それはなぜ私がブログを書こうと思ったのかにつながる。そう、私は憂さ晴らしをするために、ブログを書こうと思ったのだ。決して、学校に怒られないため、というのが目的ではない。そのためには、自分の書きたいことを書くしかないのだ。


しかし、やはりこれでは学校に消されてしまう。そこで、名無しさんは考えた。この初投稿で、名無しさんのブログが高校生に向けたものだということを証明してしまえば、今後どのような内容を書いたとしても、貫き通せるのではないかと。

読者の皆様には以下の主張を、アックマンのアクマイト光線を受けたとしても、爆発するようなことはないような心持ちで読んでほしい。


名無しさんは大学生である

⇒大学生は高校生より人生の先輩である

⇒名無しさんの言葉は人生の先輩の言葉である


そう、つまり名無しさんの言葉は高校生にとっては、ありがたい人生の先輩の言葉なのである。転じて、名無しさんの書くブログは高校生に向けたものだといえるだろう。たとえ、名無しさんが自分の好きなゲームの話を書こうが、音楽の話を書こうが、それは人生の先達が影響を受けたものを、人生の後輩たちに良かれと思って教えているだけなので、大学公認のブログに恥じないものなのだ。

そして、私は大学は環境で選ぶべきだと思っている。その大学が自分のしたいことができる環境にあるのか、これで選ぶべきだと思っている。研究がしたいなら、その研究ができる環境にある大学。資格を取りたいなら、その資格が取れる環境にある大学。そして、楽しいことがしたいなら、楽しいことができる環境にある大学を。

高校生の皆さんには、こんな人が大学公認のブログを書いているという事実から、この大学がどんなことができる大学なのかを想像してほしい。もしかしたら、この大学があなたのしたいことができる大学かもしれない。私の書くブログが、その参考、及び証左になればなによりである。

……などとそれっぽいことも、やはり怒られるのが怖いので、念のため言っておこう。


以上のことから、きっと読者の皆様には私の書くブログが高校生に向けたものであると、ご理解いただけたと思う。名無しさんは今後も、とにかく好き勝手楽しみながら書いていくので、読者の皆様も爆笑、苦笑、冷笑、嘲笑とどんな形でも、とにかく楽しんでいただけたら幸いである。

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